入社34年の次長の西島に城野印刷所のおもいでを聞きました。
私が入社したのは、昭和62年の4月、ちょうど益城町の旧社屋に引っ越した次の年でした。
旧社屋は熊本地震で被災し取り壊されましたが、私の勤続年数と旧社屋の年齢はほぼ同じです。私の城野印刷所での思い出のほとんどが旧社屋時代のものであります。
旧社屋では玄関の正面に波をイメージしたような巨大なオブジェが飾ってありました。これまで見たことのないような作品に圧倒されます。
2階に上がるとそれは広いロビーがひろがり、受付嬢がこちらを向いて立っています。今では信じがたい広さのロビーでした。
当時の、事務所は本当に広くてスペースがかなり余っていました。つまり『ガラガラ』でした。
しかし年数を重ねるたびに、人や機材が増えてスペースが埋まっていく様を見ることになります。
旧社屋の時代はアナログからデジタルへ移行する時期と重なります。
とても変化にとんだ時代にこの業種に携われたこともよい思い出のひとつです。
私が入社した当時はまだ活版印刷機が現役で、たくさんの活字が並べられ文選(活字を拾う作業)が行われていました。
制作や製版も手作業で行われ、写植機や製版用のカメラ・スキャナーなど大型の機械が所せましと設置されています。そこから生まれる印刷物は高品質で、まさに職人でなければ作ることのできない製品でした。今ではパソコン一台でできてしまうことが、たくさんの熟練した社員と大型の機械によって作り出されていました。
この技術力が城野印刷所を支えてきたと思いますし、その技術が受け継がれてきたこそ104年という歴史を刻むことができたのではないかと思っています。
新社屋の完成に当たり、引っ越し作業に携わりました。大変な作業でしたが、最後にがらんとした事務所を見たとき、入社当時がとても懐かしく思い出されました。
現在は、デジタル印刷機への転換期を迎え設備を進めていて、次の世代を担う若い人材がそれに取り組んでいます。私たちがそうであったように今度は彼らが新しい社屋にたくさんの思い出を残してゆけるよう願っています。
西島博之